私たちは、金属でできた物に囲まれて暮らしています。
構造物・建造物、その他身の回りに至るものまでと、私たちは金属で作られているものに囲まれて生活していると言っても過言ではないでしょう。
ただ、それらは同じ金属が使われているわけではなく、それぞれ用途によって使い分けられ作られています。
ここでは、代表的な金属「ステンレス・スチール・鉄」の3つについて見ていきましょう。
ステンレス・スチール・鉄について
まずは、1つ1つの金属について見ていきます。
ステンレス
ステンレスとはスチールの一種に分類されていて、正式名称をステンレス・スチールといいます。
「錆びない鉄」という意味ではあるのですが、鉄は使われているわけではありません。
「錆びにくい」という特徴はあるものの、決して錆びないというわけではない金属なので、錆びさせないためにも日頃から柔らかい布で拭くなどの手入れが必要です。
手入れは必要としつつも、ステンレスは錆びないという特徴から鉄製品には必要不可欠な「錆止め」「塗装」の必要がありません。また、湿気のあるような場所でも使用できることから、
- 厨房設備
- 化学薬品などを扱う機械器具
- 構造物
- 鉄道車両の外面・部品
また、一般的なキッチンのシンクにもよく使われています。
メリットとしては、錆びにくいという他に「強度が強い」が挙げられますが、デメリットとしては「重い・価格が高い・加工しにくいため技術を要する」などが挙げられます。
これでサビ知らず!ステンレス製品が錆びる原因・防止策スチール
日本語で鋼(はがね)を意味する金属です。
鉄を母体とし、そこに微量の炭素を配合してスチールは作られます。
単純にいえば炭素の含有量が多ければ多いほど固いスチールとなるので、その強度を活かし
- レール
- バネ
などに用いられることが多く見られます。
その反対に、炭素の含有量が少なければ少ないほど柔らかいスチールとなりますので、針金などを作る時に用いられます。
主に建物に対して使用されることが多く、
- 建物の構造体
- 外壁
- 門扉など建具類
などが例として挙げられます。
錆びやすいため、手入れは必須です。
できるだけ頻繁にクリーニングは行いましょう。
手入れの一例
- 中性洗剤で使い汚れを落とす
- 水洗いして洗剤をキレイに流す
- 水滴が残らないようしっかり乾燥させる
鉄
英語で、鉄は「iron(アイアン)」スチールは「steel(スチール)」。
鉄とスチールはよく同じものと思われがちなのですが、ちょっとの違いではあるものの、別物ですとなります。
厳密に言うとすれば鉄は「純鉄」(元素記号Fe)、スチールは先に説明したように「鋼(はがね)」と分類されます。
スチールは鉄を主体としているだけで炭素が含まれているため純粋な鉄ではありません。
純鉄は、ほぼFeのみで構成されている金属元素であり単体で使うことは現社会でほとんどありません。
純鉄それだけでは脆いため使うことができないので、純鉄に炭素を混ぜ固く使いやすい合金(スチールなど)として加工され、様々な製品が作られています。
そもそも私たちが鉄と思っているものは本当の鉄ではなく、本来、鋼(スチール)と呼ばれる合金になります。
微妙な違いではあるのですが、鉄はそのままでは使いづらいため、鉄に炭素を使い固く金属として使うことで私たちの暮らしにも役立つ金属となっています。
見分ける方法
だいたいの違いは分かっていただけたということとし、次はそれら金属の見分け方について説明していきます。
ただ、先にも説明したように純鉄はほとんど存在しませんので、純鉄に値する「鉄」は除外とし、ここではステンレスとスチールの見分け方について説明していきます。
磁石により見分ける
決して良い方法というわけではないのですが、大雑把な方法として磁石を使って見分けるという方法があります。
それぞれは、
- スチール…磁石にくっつきやすい
- ステンレス…磁石にくっつきにくい
という性質があるので、それを利用するのがいいでしょう。
ただし、ステンレスは磁石にくっつかないと言っても、ステンレスには種類がたくさんあるため、物によっては磁石にくっついてしまうものがあります。
ステンレスは、
- オーステナイト系
- マルテンサイト系
- フェライト系
といくつかの系統に分けることができ、中でも一番多く使われているのがオーステナイト系となります。
どれも成分こそ違うものの見た目が一緒なため、外見だけで判断するのは非常に難しくあります。
特にマルテンサイト系はスチールとそっくりで、そのままでは見分けは付かないことがほとんどでしょう。
マルテンサイト系のステンレスは磁石にもくっついてしまうこともあり、磁石で見分けることができません。
錆びるか錆びないかで見分ける
もう一つは、ステンレスの「さびにくい」という特徴を使って見分ける方法です。
スチールは鉄を含むため錆びますので、一目瞭然です。
もっとも実際には錆びさせるわけにはいかなかったりしますし、時間がかかるので難しいでしょうが。
その他の見分け方
一般的でない方法になりますが、電気抵抗を測って見分けるという方法があります。
電気抵抗を使うと
- ステンレス…電気抵抗が高い(スチールに比べて)
- スチール…電気抵抗が低い(ステンレスに比べて)
という結果がでますので、それを目安として見分けることができます。
素材価格について
それぞれの金属を使って様々な製品が作られています。
ステンレス製の〇〇、スチール製の〇〇と、同じ製品でも違う金属を使って作られているものがあるものです。
どちらかがいいかは人それぞれではあるとは思いますが、小さな製品であればそれほど気にかからない価格でも、大きなものとなってくれば価格が大きく変わってきてしまうので、それも製品を選ぶ際の1つの基準となってきます。
例えば、自動車メーカーなどでは自動車部品などコストを抑えたい製品に関しては鉄系の合金を使用するなどということが行われています。
また、ここでは触れていませんが、航空機など軽さを重視する製品を作るときはアルミ合金を使うなど、それに見合った金属で作っていきます。
基本、素材となる金属の価格は変動が大きいものなので、一概にいくらとは言い切れないのが現状です。
それを踏まえた上で見ていくのであれば、「ステンレス > スチール」ということになります。
基本、鉄の配合量が多い金属は価格が安いため、安さを重視するのであれば鉄系の合金を選ぶことが求められます。
ただし、「鉄は錆びる」ということを忘れてはなりません。
そのため、スチールなど鉄成分を多く含む金属は錆びを抑えるために「塗装」「メッキ」など金属の上に何らかの処理を施さねばならず、それに費用がかかる場合もあるということを覚えておきましょう。
「ステンレス > スチール」ではあるものの、事と場合によってはステンレスの方が価格を安く抑えることができます。
規格の違い
そもそもにステンレスとスチールでは板厚の規格が違うという点がありますので、価格を平等に見ることが難しいということがいえます。
ステンレスの規格
表面の状態の「未研、2B、ヘアライン、鏡面」などといったランク付けの他、板厚が1.0,1.5,2.0,3.0,と上がっていきます。
鉄の規格
1.0,1.2,1.6,2.3,3.2といった感じで板厚の規格が上がっていきます。
あくまでもこれらは規格の一部であり、他にも様々な企画規定があります。
必ずしも「これがこうだからいくらになる」というわけではありません。
どこかの業者から取り寄せるとなれば、送料や手間賃が発生するなどするため、予定より大幅に費用が重なってしまうこともあります。
まとめ
ステンレス・スチール・鉄と、それぞれ似てはいるものの別物の金属でした。
とはいっても、見分けが難しかったりするので素人ではなかなか分別するのが難しいものです。
もしもこれら金属を使うのであれば「何を作るか、どのようなところで使うのか、そして予算はいくらか」を先に明確にした上で、金属を決めた方がいいでしょう。