あなご・うなぎ・どじょうの違い~味・栄養素・歴史・雑学~

うな重とお吸い物

あなご、うなぎ、どじょうの中で日本人に最も人気があるのはうなぎではないでしょうか。

土用の丑の日にはうなぎの蒲焼が定番ですね。

つい江戸時代からうなぎが盛んに食べられるようになったと思いがちですが、実は万葉集にもうなぎを食べる習慣が既に日本にはあったことが記されています。

 

TVの「一休さん」には一休さんが病んでいる母に栄養のあるどじょうを捕まえたのですが、盗まれてしまうエピソードがあります。

後に事情を知った盗んだ子供たちは一休さんにうなぎを持っていって謝った、と一件落着、めでたし、めでたし。

一休さんが獲ったどじょう。代わりに、ともらったうなぎ。
どちらも長細く、川に棲みヌルヌルしています。

また同じく長細い体をしたあなご。
お寿司のネタとして知られていますよね。

 

これらのにょろにょろした、食べて美味しいあなご、うなぎ、そしてどじょうの違いについて探っていきたいと思います。

あなご

岩肌を動くアナゴ

「あなご」の名前の由来

「あなご」と聞くと「サザエさん」のご主人、マスオさんの同僚のアナゴ君を思い浮かべる人は私だけではないはず。

「サザエさん」の登場人物には海に関した名前が付けられています。フグ、タラ、カツオ、ワカメ、など。
あなごも同じく海に棲む魚の一種です。

漢字では「穴子」と書きますが、時には「海鰻」とも表現されます。

 

穴子は砂泥状の海底に巣穴を作って棲んでいることから「穴」子というそうです。

長崎県対馬に行った時、海岸でプラスチック製の返しのついた筒が漂着ゴミとなっているのを良く見かけました。
それはあなごを獲るための仕掛けで、筒に入ったら出られないようになっています。

一度入ったら出られないため、放置された筒にはあなごが常に入っている状態になります。

回収されずその中で死んでしまうあなごは、餌となって他のあなごをおびき寄せるそうです。

この、半永久的なシステムはゴーストフィッシングとよばれ、無駄にあなごという資源を減らしていってます。

あなごの味

あなごの煮こごり、八幡巻(やわたまき、ごぼうをあなごで巻いたもの)、肝のお吸い物、煮あなご、蒲焼、フライ、刺身、天ぷら。

あなごは淡白な味でふっくらと柔らかいのが特徴です。

 

脂は控えめなのでフライや天ぷらがおすすめ。

何しろ身がふっくらあるので満足な食べ応えです。

 

また煮あなごは上品な仕上がりです。

脂が控えめなかわり、身に甘みを感じます。

うなぎ

水槽の中の生きた鰻

うなぎとニッポン

縄文時代の貝塚から出土するうなぎの骨。
うなぎは日本人に古くから親しまれてきた魚です。

江戸時代に入ると、干潟開拓の影響でうなぎの棲みやすい環境が誕生しました。

 

簡単に獲れる栄養の高いうなぎは蒲焼にされて売られ、その値段は蕎麦と同じくらいだったそうです。

また蒲焼とはうなぎを筒切りにし、串に刺して焼いた形が蒲(がま)の穂に似ているから、そう呼ばれるようになったそうです。

うなぎと海外

アジア各国でもうなぎは大事なたんぱく源。
ベトナムでは鍋物やバーベキューなどにして食べます。

ヨーロッパではフランス、ドイツ、ベルギーなどで食べられています。イタリアにはうなぎの燻製があります。

 

また古代ローマでもうなぎは食されており、時折うなぎを飼っている池に奴隷が落とされ犠牲(つまり餌)になっていたそうです。

奴隷よりも珍重されるうなぎは、皇帝の勝利祝いのバンケットなどに出されたそうです。

うなぎ問題

近年様々な原因でうなぎの数が減ってきており、ニホンウナギはIUCNレッドリストに絶滅危惧種として選ばれました。

 

アメリカでもうなぎは獲れますが、日本ほど需要はありません。

東海岸に「生きている化石」と言われるカブトガニが生息し、何故かアメリカウナギはこれを好んで寄ってきます。

地元の漁師はカブトガニよりうなぎの方が高く売れるため、カブトガニを餌とした漁法を行っています。

しかしカブトガニもその数が減少し、各州から規制が掛かっており、そのため、中国経由でベトナムからカブトガニが餌として輸入されました。

 

密輸疑惑で済みましたが、アメリカからのうなぎがアジアに出回っていることを確証するような事件でした。

どじょう

2匹のどじょう

どじょうと庶民

どじょうと聞いて真っ先に思うのは「柳川鍋」。
ごぼうとの愛称抜群な江戸料理です。
田んぼに多く見られ、農村ではたんぱく源の一つとして食べられてきました。

どじょうすくいの踊りでどじょうを捕まえるのに苦労する姿が滑稽に表現されていますが、あれは田んぼのぬかった場所での設定です。

 

先ほどの一休さんも病気になった母上に差し上げる、ということでどじょうを獲りました。

実は「うなぎ一匹、どじょう一匹」と言われるくらいあの小さなどじょう一匹で大きなうなぎ一匹に匹敵するくらい栄養があると言われています。

栄養価の違い

カロリーの一番少ないのはどじょうで、100gにつき79Kcalです。

あなごは161 Kcal、うなぎは255 Kcal。どじょうが一番ヘルシーです。

 

脂ののっているうなぎの脂質はやはり高く、100gにつき19.3g。
さっぱりしたあなごは9.3gでその半分以下ですが、どじょうは更に下回り、1.2gです。

 

たんぱく質は全部同等だから、ダイエットにはどじょうが一番ですね。

しかも鉄分はどじょう5.6gに対しあなご0.9g、うなぎは何と0.5gです。

 

カルシウムなんてどじょう1100mg、あなご75mg、うなぎ130mgでまたどじょうの勝利!

細胞の新陳代謝を促し、お肌をきれいにするビタミンB2もどじょうが優れ、1.09mgに対し、あなご0.14mg、うなぎ0.48mgとなっています。

 

しかしビタミンAはうなぎが優れ、あなごはうなぎの5分の1程度、どじょうは10分の1しかありません。
ビタミンAも細胞の再生には欠かせない栄養素です。

100g当たりの栄養素
  単位 あなご うなぎ どじょう

廃棄率

35 25 0
エネルギー Kcal 161 255 79
水分 g 72.2 62.1 79.1
タンパク質 g 17.3 17.1 16.1
脂質 g 9.3 19.3 1.2
カルシウム mg 75 130 1100
リン mg 210 250 690
mg 0.9 0.5 5.6
ナトリウム mg 150 74 96
カリウム mg 370 230 290
ビタミンA μg 500 2400 25
ビタミンB1 mg 0.05 0.13 0.09
ビタミンB2 mg 0.14 0.48 1.09
ビタミンC mg 2 2 1

相場の違い

値札が並べられたお魚屋さんの店頭

築地市場で蒲焼うなぎ1kgはだいたい3500円くらいで、あなごは2500円ほど。どじょうが一番高く、5000円近くになります。
養殖のどじょうでの話です。

 

田んぼで良く獲れていたどじょうはやはり田んぼの減少により、希少価値が高くなっているのでしょうか。

一休さんは大きなうなぎをもらって得したなあ、と思ったのですが、実は損していた?

あなごは詳しい生態が分かっておらず、養殖は発展途上です。
うなぎもまだ完全養殖には至っておりません。

 

あなごのゴーストフィッシング、うなぎの絶滅危惧種認定などがあり、これからこれらの2種の価格沸騰は輸入なしでは避けられず、どじょうくらいの高値になってしまうかもしれません。

生態系の違い

あなご、うなぎ共にウナギ目に属しています。

どちらも海に棲みますが、うなぎはその一生の殆どを川で過ごします。

産卵のために海に戻り、孵化した幼生は海で過ごし、また川に戻ってくるのです。

 

どじょうは完全な淡水魚でコイ目に属します。

川でうなぎとどじょうが鉢合わせになるのは自然なことで、一休さんの話も辻褄が合いますね。

まとめ

あなご、うなぎ、どじょう。どれも日本人に馴染みのある魚です。
生物学的にこれらの違いは大きいですが、どれも栄養価の高い食材です。

値段はどじょうが飛び抜けて高値ですが、うなぎも需要が大きいため、時期によっては高くなります。

 

あなごは海の魚。
夜行性の習性のせいで、その存在はあまり知られていませんでした。

江戸時代後期になると江戸前寿司や天ぷらに欠かせない食材となり、日本史デビューを果たしました。

今では漁獲高が減少傾向のため、高級食材となり値段も”うなぎ登り”中です。

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