ゲームをしたりする人のパソコンには、グラボ(グラフィックボード)がついていることでしょう。
ほとんどの人のパソコンには、グラボが一枚接続されていると思いますが、グラボはパソコン一台に対して複数挿すことができます。
今回はグラフィックボードの2枚挿しについて見ていきましょう。
しっかりとした知識を持って行わないと、せっかくグラボ購入しても損することにもなりかねません。
目次
グラフィックボードの複数挿しとは
名前の通りグラフィックボードを複数枚挿すことを言います。
仮装通貨などのマイニングや、パソコンの性能を競ったりしている人たちは、グラボを3枚以上、複数挿ししたパソコンを組んでいます。
それ以外の用途で組まれた複数挿しのパソコンは2枚挿しが多いです。
では、複数挿しのメリット、デメリットを見てみましょう。
複数挿しのメリット
ディスプレイの数を増やせる
価格、種類関係なく、グラボを挿せばその分出力ポートも増えるので、安価に出力ポートを増やすことができます。
性能が上がる
GeForce製なら「SLI」、Radeon製なら「CrossFireX(旧CrossFire)」という技術を使うことにより、性能を上げることができます。
ただし、同じ会社、同じ品番でなければいけません。
扱っているメーカーは違っても動作します。
もっと詳しく言うと、GPUのチップとVRAMの容量が一緒で無ければいけないということです。
クロック数は違っても性能を上げることはできますが、クロック数が低いほうが基準になります。
複数挿しのデメリット
発熱、消費電力が倍以上になり、空きスペースが減る
グラボを増やせば、その分発熱、消費電力が倍以上になります。
発熱により熱くなったパソコン内部を冷やそうとファンも回転数を上げるため、ファンの音がうるさくなり、空冷では冷やしきれないこともしばしばあります。
また、空きスペースが減るので、コードが嵩張ったり、ほかの部品が取り付けしづらくなります。
種類の違うグラボを搭載すると不具合を起こすことがある
ドライバの競合や、グラボを認識しないなどの不具合が生じることがあります。
アプリによっては性能が落ちてしまう
上記にもあるように性能を上げるには「SLI」や「CrossFireX」という技術を使用します。
しかしアプリによってはその技術が非対応で、性能が上がらなかったり、落ちてしまうことがあります。
専用のパーツがいる
SLIやCrossFireをするには、グラボとグラボを繋ぐブリッジケーブルという部品が必要になります。
マザーボードも少し特殊なものが必要になります。
マザーボードにはグラボを挿すPCIスロットがあります。このスロットは「×16」「×8」「×4」とわかれています。
複数挿しができるグラボは、ほとんど×16のスロットにしか対応してません。
ですが、一般的なマザーボードにはスロットが一つずつしかありません、
一枚挿しなら×8も×16あまり変わりませんが、複数挿しになると結構差が出るので、×16スロットが二つ以上あるマザーボードを入手する必要があります。
また、×16スロットが二つ以上あっても、SLIのみ対応で、両方の技術に対応してない場合があります。
複数挿しができるマザーボードにはSLI対応、CrossFire対応のどちらか、もしくは両方が記載されているはずなので、しっかり確認しましょう。
グラフィックボードの2枚挿しについて
上記で複数挿しのメリット・デメリットを大まかに説明しましたが、デメリットのほうが多いですね。
では、グラボの複数挿しはしないほうが良いのでしょうか?
2枚挿しにするとよいのはどんなとき?
- 「4K60FPSでゲームがしたい!」
- 「ハイエンドクラス一枚じゃ性能が足りないけど、二枚買うのはお金がもったいない!」
- 「複数挿しに対応したグラボを一枚所有していて、PCの性能をもっと上げたい!」
- 「ディスプレイの数を増やしたい!」
こういった理由があれば、グラボの二枚挿しをする価値はあると思います。
使用したいアプリが複数挿しに対応していれば、最新のグラボを買うより、数年前のグラボや、ミドルクラスのグラボを二枚買ったほうが安く性能を上げられる場合があります。
また複数挿しに対応したグラボを一枚持っていれば、新しいものを買うより、同じグラボをもう一枚買うほうが安く性能を上げられる可能性がありますからね。
※グラフィックボードの価格は時価なので、断言はできません。
SLIなどで性能を上げず、安価にディスプレイを増やしたいときは、ハイエンドクラスのグラボを買うより、SLIの性能がついていないローエンドグラボ、GT1030など10000円前後のグラボを二枚さしたほうが、安価に出力ポートの数を増やすことができます。
人によっては、3000~5000円程のもっと安いグラボでもいいという人もいるかもしれません。
SLIなどを使わなくても、なるべく同じグラボを使ったほうが、不具合は少なくなります。
グラフィックボードの違い
最近のハイエンドクラスのグラボは、グラボ二枚分のチップセットを内蔵していたり、一枚のグラボの中に基盤が二枚あり、グラボが二枚が合わさって一枚のグラボになっているものもあります。
そういったグラボを二枚搭載すると、ミドルクラスのグラボの二枚挿しと比べて、性能は非常に上がりますが、発熱や消費電力も非常に上がります。
ミドルクラスのグラボ一枚挿しを基準に考えると、ハイエンドクラスのグラボの二枚挿しは、性能約3倍、消費電力や発熱は約3~4倍といっても過言ではないでしょう。
SLIとCrossFireXの違い
上記では、GeForce製ならSLI、Radeon製ならCrossFireX、といいましたが、それぞれにメリットデメリットがあります。
ここでは、メーカーによる違いを見てみましょう。
GeForce:SLI
~メリット~
- 安定性が高い
- 対応しているアプリが多く不具合が少ない、オールマイティ
- 初心者でも対応しやすい
- ゲームと相性がよく、一般的に売られているゲーミングPCはほとんどGeForce製
- シェア率が高いので、Webサイト、Webページが多く、自力で調べやすい
- 省電力で、最新のグラボでも一番消費するもので250w、ミドルクラスなら100w以下のグラボもある
~デメリット~
- GTX○60、70以上のハイエンドモデルしか複数挿しに対応していない
- 価格が高く、新しい世代が出たり、数年たっても価格が下がりにくい
Radeon:CrossFireX
~メリット~
- 比較的低価格でコストパフォーマンスが良い
- ローエンドモデルのグラボでも複数挿しができる
- 種類が多くいろいろカスタマイズできる
- AMD社製品なのでAMD製CPUと相性抜群
~デメリット~
- ある程度専門的な知識がないと、対応が難しいことがある、上級者向け
- 相性の良し悪しの差が激しい
- 消費電力が高く、最新のグラボでも一番消費するもので500w、ミドルクラスのものでも200w以上のグラボもある
二枚挿しのやり方
では、複数挿しの方法を見ていきましょう。
用意するもの
- グラボ二枚、性能を上げたい場合は同じものを二枚
- SLI:ブリッジケーブル
- CrossFireX:ブリッジケーブル(R9 290以降のものであれば不要だが、ブリッジケーブルを接続した方が安定する)
- 以下のスペックのパソコン
CPU:周波数が最低2.0GHz、できれば3.0GHz以上で4コア以上のもの
メモリ:最低8GB、推奨16GB以上
マザーボード:×16のPCIスロットが二つ以上あるもの、性能を上げるのであればグラボの複数挿しに対応しているもの
~SLIの場合~
- マザーボードに一枚グラボを挿す
- パソコンにドライバをダウンロードする(※既にグラボが一枚接続してある場合はここから)
- マザーボードにもう一枚のグラボを挿す
- 二枚のグラボをブリッジケーブルで接続する
- パソコンを起動する
- クリックデスクトップの何もないところで右クリック
- NVIDIAコントロールパネル画面を表示し、「3D 設定」の欄の「SLI、Surround、PhysXの設定」を開く
- 「SLIを無効にする」のチェックを外し、有効にする(※この時点でSLIは有効になります)
- 「3Dパフォーマンスを最大化する」にチェックを入れる
~CrossFireXの場合~
- ドライバーを削除する(※既にグラボが一枚接続してある場合はここから)
- グラボを二枚挿す、ブリッジケーブルがあれば使用する(※新しく構築する場合はここから)
- ドライバーを再インストールする
- Crimson(ドライバー)を起動し、左上のほうにある「ゲーム」を開く
- 「グローバル設定」を開く
- 「ADM CrossFire」をオンにする。CrossFireXが有効になっているか常に確認したい人は、「ADM CrossFire Logo」もオンにする
(※「ADM CrossFire Logo」をオンにすると、右上にロゴが出ます)
二枚挿しの注意点・トラブル
~注意点~
グラフィックボードも精密な基盤があるので、くれぐれも扱いには注意しましょう。
扱う前に静電気の放電を忘れずに。
また、グラボの複数挿しをする前に、自分のパソコンや、新しく組もうとしているパソコンの性能を見直しましょう。
あまり性能がよくないと、CPUなどの他の部品が足を引っ張ってしまい、不具合が起きたり、二枚挿しにしても思うように性能が上がらないことがあります。
パソコンとグラボのバランス・相性をしっかり考慮しましょう。
パソコンが起動しない!すぐに落ちてしまう!など、うまく起動しない場合
- 補助電源がしっかり接続されているか、電力が足りているかなどを確認する
- しっかり×16スロットに挿しているか確認する
- マザーボードが複数挿しに対応しているか確認する
- しっかり冷却できているかパソコンの温度を確認する
- 各種ケーブルがしっかり接続されているか確認する
- ドライバーを再インストールする
- 埃などでショートしてないか確認する、埃っぽければ掃除する(基盤やスロットなど)
- グラボではなく、CPUなど他の部品を見直す
思うように性能が上がらない!
- ブリッジケーブルが接続されているか確認する
- 使用しているアプリが複数挿しに対応しているか確認する
- 設定を見直す
- パソコンの性能を見直す
- ドライバーを再インストールする
グラボが認識されない!
- BIOS設定を見直す
- デバイス設定を見直す
- Windowsの更新プログラムがある場合は、Windowsを更新してからドライバーを再インストールする
おわりに…
基本的にグラボの不具合というのは、初的なミスや相性などがほとんどですが、グラボの複数挿しは基本的に難しく上級者向けです。
いろいろ試してもうまくいかないときは、専門家など詳しい方に質問したり、初期不良を疑いましょう。
また、上記にあるパソコンのスペックや、グラボの値段、性能などは筆者の見解によるものです。
人によっては意見が違うことがあるので、あくまで参考にしてみてください。